断熱材の種類はどれくらいあるの?
断熱材の種類は大きく分けて3種類
そもそも、昔の日本の住まいに関する考え方が室内を外部と遮断することにより快適に保つというものではなく、夏の蒸し暑さに対して風通しを良くして快適に過ごすというものが一般的で気密性を高めるというよりも開放感を重視する考えが強かったように感じます。
しかし、日本にも西洋文化の流れが入ってきたことにより、洋風住宅が注目を浴びるようになりました。西洋の住宅は日本のように四季がある風土が少ないこともあり、外部と室内を遮断することにより室内を快適に保つという高気密・高断熱という考え方があり、それが日本でも主流になってきました。現在の日本の住宅においても様々な断熱材が使われるようになりました。
一般的に断熱材というと北海道などの寒冷地において寒さを防ぐためのものというイメージがありますが、現在の日本では夏の暑さ対策の方が重要になってきており、夏の冷房効率を高めるために断熱性能を上げるという考え方が強くなってきています。
ここで断熱材の種類を説明してゆきます。断熱材は使い材料の違いで大きく分けて3種類に分類できます。
「鉱物系」「化学系」「自然系」の3種類です。
「鉱物系」
グラスウール
原料としてはガラスになります。ガラスを溶かして繊維状にしてから接着材で成形したものです。グラスウールは原料がガラスの為、燃えにくいという性質があります。日本でも不燃材料として認められていて、北欧や北米でもよく使われル断熱材です。以前は結露やズレ下がるなどのデメリットが指摘されていたこともありますが最近ではこの様なマイネス面も解消され住宅現場でもよく使われております。
ロックウール
玄武岩、その他の天然岩石などが原料となります。1,500℃位の高温で溶かし、遠心力などで吹き飛ばし、繊維状にした鉱物繊維です。グラスウールと同じく日本では不燃材料と認められています。日本でのシェアはあまりありませんが、北欧などではグラスウールと同様に多く使われています。また、この断熱材は繊維間に大量の空気層があるので断熱性能が高いという特徴があります。また、吸音性能も高いので交通量の多い場所で騒音対策として使われることもあります。ロックウールは断熱性と吸音性能の両方の特性があります。
「化学系」
ビーズ法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂に発泡剤と難燃剤を加えてビーズ状にし、蒸気で発泡させてから金型に充填して加熱します。約30~80倍に発泡してつくります。金型によって様々な形状に加工できるので自由な形に仕上げることが可能です。軽量で防水性能も高く、おまけに緩衝性も高く、施工性にも優れています。一般には「発泡スチロール」と呼ばれていうる断熱材です。
押し出し法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂に発泡剤と難燃剤を加えて混ぜ合わせ、発泡させながら押出成形します。形状はボード状です。独立した細かい気泡から構成されるので断熱性能が高く、堅く耐圧力のある外断熱に適した断熱材です。防水性能があり吸湿しにくいため基礎部分の断熱材料として使うことも多い。
硬質ウレタンフォーム
ポリイソシアネートとポリオールに、発泡剤や触媒などを混ぜて生成します。ボード状と現場発泡の2種類があり、外張り断熱で用いられることが多い断熱材です。気泡に熱伝導率の低いガスが含まれているため優れた断熱性能を発揮し、薄くても断熱効果を発揮します。自己接着性という他の断熱材にはない特長があるので、現場発泡で施工する際には接着剤を使わなくても金属・合板・コンクリート等の表面に直に発泡するだけで、断熱層を作ることが可能です。
高発泡ポリエチレンフォーム
ポリエチレン樹脂に発泡剤を加えて発泡させた断熱材です。他のボード状の断熱材に比べて柔軟性があり、壁や柱の間などや狭い隙間にも充填しやすいのが特長です。断熱性能や防水性能もあるので床・壁以外にも屋根や配管カバーなどの多様な使用用途があります。環境にやさしく、燃えた時の有害性も少ない材料です。
フェノールフォーム
フェノール樹脂に発泡剤、硬化剤などを加えてボード状に形成します。断熱性能が高いうえに経年劣化しにくく、130℃までの高温に耐える耐熱性能を持ち、耐火性能にも優れており、表面に炎を当てても炭化するだけで煙や有害ガスがほとんど発生しないため、不燃・準不燃材料として認められています。
「自然系」
セルロースファイバー
回収された新聞古紙を粉砕して綿状にし、防熱・撥水性能を付加した断熱材です。綿状で、施工方法は吹き込み法(雪をつもらせるように敷きつめる)と、吹きつけ(壁などに直接固着させる)がある。グラスウールよりも吸音性能が高く、アメリカではグラスウールよりも多く使用されている。自然系の中では一番歴史がある。
羊毛
原料はウールで、形状はマット状とバラした綿のようにした状態がある。自然系の中では比較的安価で最近のニーズは増えてきている。
断熱材の優劣は材料だけで決まるものではない
それらの熱伝導率・防火性・価格を表にして比較してみました。
断熱材 | 熱伝導率(w/㎡・k) | 断熱性能 | 防火性 | 価格 | |
鉱物系 | グラスウール | 0.038 | 1 | 3 | 1 |
ロックウール | 0.038 | 1 | 3 | 1 | |
化学系 | ビーズ法ポリスチレンフォーム | 0.034 | 2 | 2 | 2 |
押し出し法ポリスチレンフォーム | 0.028 | 3 | 2 | 2 | |
硬質ウレタンフォーム | 0.024 | 3 | 2 | 3 | |
フェノールフォーム | 0.02 | 3 | 2 | 3 | |
自然系 | セルロースファイバー | 0.04 | 1 | 2 | 2 |
羊毛 | 0.04 | 1 | 2 | 2 |
※熱伝導率の数値が低いものほど断熱性能が高い、断熱性能は数値が高いほど性能が高い、
※グラスウールは高性能グラスウール16Kの場合
※ビーズ法ポリスチレンフォームはA種特号の場合
※押し出し法ポリスチレンフォームはA種3種の場合
※硬質ウレタンフォームはA種2種3号の場合
断熱性能では化学系が高く、防火性と価格面では鉱物系が優れている。自然系は他の断熱材よりも断熱性能や価格・防火性では劣るものの、自然由来の素材であるため健康志向のユーザーには人気の断熱材です。
上記のお分かりのように断熱材にはそれぞれ特徴があり、断熱性能や価格だけで選ぶことが難しいというのが私の意見です。
断熱性能は施工の精度が重要
断熱の施工方法の種類
木造住宅の断熱の施工方法は大きくわけて3つあります。
●充填断熱
柱と柱の間に断熱材を充填する工法です。
充填断熱は、外張り断熱に比べてコストが安く抑えられますし、ほぼすべての断熱材での施工が出来る事がメリットとして挙げられます。デメリットとしては比較的施工に手間がかかるため施工精度が求められる点です。
外側に断熱材を張り付ける工法です。
外張り断熱は柱の外側から丸ごと建物を覆うため充填断熱と比べて柱部分などの隙間から熱が逃げたり入り込んだりという事が無いので、断熱性能が高まります。また充填断熱と比べて、施工しやすいというメリットがあります。しかしながら、どうしても断熱材が厚くなる傾向があるので、材料によってはしっかりと施工することが難しくなります。また、地震で揺れたりすると垂れ下がる危険があるためので対策工事が必要なこと、狭小住宅では敷地に余裕がないので壁厚が厚くなるため室内が狭くなる場合もあります。
また、家の基礎部分も丸ごと断熱するという工法があり、最近ニーズが増えてきている断熱方法です。この断熱方法は床下を乾燥状態に保てるので、防腐・防蟻の処理をする必要がなく、シックハウスに悩む過敏症の方にも有効な断熱方法です。木材の耐久性も上がりますし、床下が断熱されているので暖房費を節約しやすいメリットもあります。
●付加断熱
充填断熱と外張り断熱の両方を取り入れた工法
付加断熱とは、填断熱と外張り断熱の両方で施工する方法ですがコストが上がるというデメリットがありますしかしそれぞれ単独の工法と比べて断熱材を厚くできるため、断熱性能が高くなるというメリットがあります。
分かりやすく言えば、コストはかかるが充填断熱と外張り断熱の良いとこどりをして断熱性能を上げようというものです。しかしながら、日本においてはまだまだ一般的ではありませんし、施工できる施工会社も少ないと思いますので一概にお勧めはできません。
大切なのは断熱材の工法や材料もさることながら、精度の高い施工ができるかという事の方が重要です。どんなにいい材料、工法でも施工がいい加減であればその性能も半減してしまいます。しっかりとした施工会社を選ぶことが一番重要です。
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