昔の日本家屋は隙間だらけという話はよく聞きますが、最近は「高断熱・高気密」を売りにしたハウスメーカーが多く出てきました。「高断熱」は夏は涼しく、冬は暖かいというイメージもあり、分かりやすいと思いますがなぜ「高気密」が必要なのか?「高気密」の住宅はどのようなメリット・デメリットがあるのかを分かりやすくご説明してゆきます。
そもそも「気密性」とは何か?

高気密住宅とは何か?
戸建ての木造住宅は大半が在来工法(木造軸組工法)で建てられた木造住宅です。どんなに精巧にかつ丁寧に建てたとしても、工場で機械が作っているわけではありませんので、壁・天井、床、窓などに、どうしてもちょっとした隙間が空いてしまいます。当然、目に見えるほどの隙間ではありませんので隙間風を感じることはありません。しかしながら、意外と空気の出入りが多く、冬には室内のあたたかい空気が外へ逃げていき、夏は逆にせっかく冷やした室内の冷気が外に逃げてゆきます。この隙間が多いほど冷暖房の効きが悪く、不快に感じます。
簡単にいうと「気密性」とは、どれだけ建物に隙間が少ないかということです。気密性が高いほど、室内の空気は外に漏れず、外気は中に入り込みにくいことを表しています。
気密性を高めるためには、精度の高い建築部材や、防湿シート、断熱材、気密テープなどの専用部材を使い、隙間を作らないように、丁寧な施工を行う必要があるための高い施工技術が必要となります。
気密性を表す数値としては、「C値(相当すき間面積)」という値があります。
C値とは、建物の床面積㎡あたりの隙間面積を表す値で、小さいほどに気密性が高くなります。
例えば、延べ床面積30坪(約100㎡)の家で、C値が2.0の場合、100×2.0=200㎠となり建物全体の隙間を集めると200㎠あるという事になります。
郵便はがき1枚が148㎠なのではがき約1.35枚分の隙間があるお家ということになります。
高気密住宅のメリット
- 省エネルギーで部屋の温度を快適に保つ
- 断熱性能の低下を防ぐ
- 壁内や床下の結露を防ぐ
- 定期的な換気を行って嫌な臭いの発生を防ぐ
- 防音効果がある
- ヒートショックを防ぐ
省エネルギーで部屋の温度を快適に保つ
気密性が低いと外気が室内に侵入しやすくなり、夏は蒸し暑く、冬は寒くて不快な家になります。冷暖房を使っても、冬は暖かい空気が外に漏れ、夏は蒸し暑い外気が入ってきてしまい、十分な冷暖房効果が得られないため、電気料金がかさんでしまいます。
この点、気密性の高くなれば室内の空気が漏れにくく外気も侵入しにくいので、省エネルギーで快適な住環境を維持するために家の隙間はできる限り少なくしたほうが良いのです。
断熱性能の低下を防ぐ
快適に過ごせる室内環境を維持するためには断熱材は不可欠です。しかし、断熱材はあくまでも室内の温度を保つ役割ためのものであり、隙間風は防ぐここはできません。
どんなに高性能な断熱材を用いても、隙間があれば断熱材の意味がありません。気密性を高めると風そのものを遮断することができるため、断熱性能が低下を防ぐことができます。
快適に過ごすことができる家を建てるために必要な断熱性能。断熱材などを使って室内の温度を保つという役割がありますが、気密性が高いことによって、断熱性能が低下してしまうのを防ぐことができます。
壁内や床下の結露を防ぐ
冬場は乾燥した外気と比べると、室内の湿度は高くなり、部屋の空気中には大量の湿気が発生しています。住宅に隙間が多いと、隙間から室内の湿気が壁の中や床下に流れ込み、壁の内側で結露して柱を腐らせり、カビを発生させたりしてしまいます。気密性が高ければ、湿気が室内から壁の中へ流れて込んでしまう心配もありません。
定期的な換気を行って嫌な臭いの発生を防ぐ
人が生活していると、室内には水蒸気や二酸化炭素などの匂い成分などさまざまな物質が室内で発生します。
これらの汚染物質を屋外へ排出するために定期的な換気が必要ですが、住宅の中に気密性ばらつきがあると、換気を効率よく行えません。昔の日本家屋は隙間だらけで常に窓を開けているような状態だったので、換気を気にする必要もありませんでした。しかし、近年の住宅は柱を石膏ボードなどで完全に隠して作る工法が一般的になり、部分的に隙間の多い部屋と、隙間の少ない部屋が混在しています。このような状態では、換気扇でうまく換気することができません。
すると室内に汚染物質が溜まってしまい、室内に嫌な臭いをあればうまく外部に排出できません。住宅の気密性を均一に高くして24時間換気扇を回すことで、換気のバラつきを防ぎ効率的に臭いの発生を防げます。
防音効果がある
気密性が高いということは、室内と外部の隙間が少ない分、音の漏れや進入しにくくなるため、遮音性も高くなります。この点は交通量の多い場所や学校の近くなどで住宅を建てる場合などは重要なポイントです。
せっかくのマイホームで騒音に悩まされるなんて、考えたくありませんよね。気密性が高いと外部の音もある程度、遮断できるため、比較的静かな環境を実現できるでしょう。また、室内の音が外に漏れにくいので小さなお子さんがいらっしゃるご家庭や、自宅で音楽や映画を鑑賞したいと考えている方にとっても重要なポイントです。
ヒートショックを防ぐ
テレビでも寒くなると取り上げられる「ヒートショック」ですが、これは、暖かい場所から寒い場所へ移動した時に起ります。急激な温度変化によって血管が収縮し、血圧が一気に上がり、意識を失ったり心筋梗塞などを引き起こしたりする症状です。高齢の方や生活習慣病の方は発症しやすいため要注意です。建物の気密性を高めておくと、冷たい外気が入り込みにくいことによって、ヒートショックが起きやすい風呂場や廊下なども室内の温度差が少ないのが特徴。家の中でのヒートショックの心配が少なくなります。
高気密住宅のデメリット
快適性や金銭面などでメリットがある高気密住宅ですが、デメリットはどのようなものがあるのでしょう?
高い施工品質が必要になるため、建築業者の選定が難しい
高気密のメリットの部分でも書きましたが、高気密にする為には、材料や工法だけではなく、高い施工レベルも必要になってきます。建築業者でも限られた会社でないと施工が出来ないのに、一般の素人の方がきちんと施工が出来ているかを見極めることは正直言って難しいと言わざるを得ません。
例えば、「気密性を上げるように施工する」と言葉で言うと一言ですが、隙間を作らずに外壁内に断熱材を充填したり、内壁用の石膏ボードを隙間なく設置してゆく作業というのは、本当に大変な作業です。一般の方が考えている以上に細かい作業と地道な作業の積み重ねによって実現します。作業量が膨大にも関わらず、「たったそれくらい。」と思われそうな小さな施工不良が気密性を下げてゆきます。このような地道な作業ができる建築業者でなければ、きちんとした高気密の性能は発揮できません。
建築コストが上がる
当然の話ですが、このように材料も余分に必要ですし、大工さんの作業量もかなり増えることで、工事費が高くなりがちです。
暖房器具によっては乾燥しやすい
高気密住宅では気密性が高い分、機械式換気に頼ることになります。石油ストーブなど二酸化炭素の排出量の多い暖房器具が使えない場合が多いため、エアコンなどの暖房器具が主流となります。もちろん、石油ストーブも物理的に使えないわけではありませんが、開放型の石油ストーブなどは二酸化炭素の排出量がダントツに多いので、高気密住宅で想定している換気量では追い付かなくなる可能性があるからです。
エアコンなど、気流が発生する暖房器具の使用は、家全体を暖めてくれる分、家全体が乾燥しやすくなるというデメリットがあります。使用する暖房器具は、乾燥予防を含めて選択する必要があります。
4.最後に
ここまで、高気密住宅のメリットとデメリットをお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか?最近は高断熱・高気密の住宅を謳っている会社も増えてきましたので購入るする側としては気になる点も多いかと思います。上記でお話した内容は、まずは抑えておくべき知識です。インターンネットで検索すればもっと詳しい内容の気記もありますし、実際に高気密住宅にお住まいの方が書かれたブログなどもありますのでご参考になさって頂ければと思います。合