不動産の親族間売買の問題点

不動産の売買において親族間の売買が難しいことはご存知でしょうか?他人同士が売主・買主の場合なら問題がない取引でも親族間となると難しくなるケースがあります。

  1. 親族間の不動産の売買売買の流れ
  2. 親族間の不動産売買にはどのような点に注意が必要なのか?

以上について、解説してゆきたいと思います。

1.親族間の不動産売買の流れ

不動産調査

①登記簿謄本の確認
売買する対象不動産の情報を登記簿謄本を取得して確認することが重要です。この登記簿謄本は京都市内であればどこの法務局でも取得ができます。

登記簿謄本には

  • 甲区欄

現在の所有者が誰であるのかの記載があります。

  • 乙区欄

何らかの担保が入っていないかまたは差し押さえ等がされていないかの記載があります。

上記の2欄から構成されています。分かりにくい場合は法務局の職員に聞けば、丁寧に教えてくれます。

②不動産の価格の調査
どうしても親族間売買という性質上、売買金額が低くなりがちです。しかしながら、親族間売買では「みなし贈与税」がかからないように対象物件の不動産価格が周辺の物件と比較して極端に低い金額にすることは避けなければなりません。

周辺不動産の価格調査に関してはインターネットサイト(SUUMOやアットホームなど)をりようして近隣の類似物件をピックアップして調べるようにします。

また、公示価格や国税庁HPで路線価も参考になりますのでそれらの活用しながら売買価格を決めてゆきましょう。

③売買契約の締結及び売買代金の支払い
親族間売買だからと適当にするのではなく、売買についての条件を相談してゆきましょう。価格も重要ですが、建物に不具合あった場合はどうするか?契約はいつにするのか?引渡し日はいつにするのか?登記手続きは誰にしてもらうのか?など、詳細な条件を決めていきましょう。

条件が整理できれば、次は売買契約書の準備してゆきます。親族間だからと契約書までは作らなくてもいいと考える方もおられますが、住宅ローンを借りる場合などは必ず、契約書は必要になります。契約書は必ず、作成するようにしましょう。また、売買契約書にはきちんと収入印紙も貼りましょう。契約書に印紙を貼付しないと正式な書類として認められません。銀行などに契約書を提出する場合、必ず印紙の貼付が必須となります。また、売買金額によって印紙額が異なりますので注意が必要です。

契約書の準備が出来たら当事者間で売買契約書に記名・押印を行います。そして、売買代金の授受も併せて行います。税務上の処理の事もありますので親族間売買であったとしても、領収書の作成は必ず行うようにしましょう。
法務局の手続き完了 

契約締結と売買代金の支払いが終われば、法務局に登記書類を提出します。提出した書類に不備がなければ、およそ2週間から3週間くらいで登記手続きが完了しますが、もし不備などがあれば、足りない書類を揃えたり、訂正などの対応をしなければなりませんので、登記手続きは司法書士に任せた方が賢明です。登記手続きに慣れていない場合には、4~5回程度は法務局へ出向くことがあり、非常に面倒だからです。

2.親族間の不動産売買にはどのような点に注意が必要なのか?

親族間の売買

親族間で不動産を売買するというケースは色々なケースが考えられます。

  • 親の自宅を子供が取得する場合
  • 子供の不動産を親が取得する場合
  • 兄弟間での不動産取引

親族間売買は他人同士の不動産売買と何ら変わらないように見えますが、どういった点に注意が必要なのでしょうか?

 

親族間売買は「みなし贈与」とみなされる可能性がある

親族間で不動産を売買する場合、一般の不動産売買と同じように契約書を取り交わして、取引をしても、贈与したとみなされる場合があります。

このケースを「みなし贈与」と言って、贈与とみなされた場合は、贈与税がかかる場合があります。

 

「3,000万円特別控除」が使えない

3000万円控除

親子や夫婦、同居する親族、内縁関係にある人といった親族に不動産を売却する場合、3,000万円の特別控除が使えない。

通常、居住用住宅を売却する場合、譲渡所得から3000万円を控除できる特例が3,000万円特別控除です。

譲渡所得とは、不動産を売却して利益が出た場合に譲渡税という税金の対象となる所得のことで、以下の式で計算します。

通常、居住用住宅の売却する場合、売却で利益が出たとしても、利益が3,000万円までであれば税金がかかりません。

しかし、親族間売買の場合は、3,000万円の特別控除の適用条件から外れるため、3,000万円の控除を受けられません。

 

住宅ローンが通りにくい

住宅ローン

これはどうしてと思う方が多いかもしれませんが親族間売買では、住宅ローンを受けられないケースが多々あります。

理由としては以下の要因が起因しています。

①住宅ローンの不正利用につながりやすいから

親族間売買が起こるケースとして不動産の所有者が債務返済のための売却というものがよくあります。住宅ローンは、自宅を購入するための融資であり、それ以外での利用は避けたいという思惑が金融機関サイドにはあります。

親族間の不動産取引の場合、住宅ローンの資金が債務返済のためという、「住宅取得のため」という本来の目的とは別の用途として利用されることが考えられます。

また、親族間売買においては、意図的に売買価格を低く設定するケースも多くみられます。これも贈与とみられるため、金融機関サイドからすれば非常に怪しい売買とみなされるので、融資できないという判断になる場合があります。

②住宅ローンの保証会社の審査が通らない

住宅ローンの保証会社とは、金融機関から借入を行う当事者が返済不能になった場合に代理で金融機関に弁済を行う会社になります。ほとんどの金融機関では、保証会社の保証が住宅ローンの条件となっています。

しかし、保証会社の契約規定に「親族間売買は保証の範囲外」といった項目があるケースが多々あります。

このような理由から住宅ローンの保証会社の審査が通らない可能性が高いのです。

もちろん、すべての金融機関が親族間売買の融資に消極的かというと、そうでもありません。親族間売買でも、きちんと不動産会社に適正な販売価格で仲介してもらった場合は、贈与とみられるリスクは低くなります。

まとめ

不動産の親族間売買は、簡単そうに見えても意外と難しい取引です。

不動産登記には、手間も時間もかかります。そして相続や離婚による親族間売買にはとくに、専門的な知識も必要となります。そのため状況に応じて、司法書士や弁護士などの専門家に介入してもらうことをお勧めします。